近年スマートワークという言葉をよく耳にするようになりました。しかしスマートワークとはどのようなものなのか詳しくは分からないという方も少なくはありません。スマートワークを実現することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?ここではスマートワークの種類や導入のメリット、また課題や対策についても解説していきます。
「スマートワーク」とはなにか?
スマートワークとはICT(情報通信技術)を活用することで、時間や場所も選ばず、組織と個人の生産性を最大化することを目的とした働き方のことです。働き方改革の施策として検討されることも多く、人事制度の最適化と組み合わせて実現する場合もあります。
労働人口の減少による人手不足や一人あたりの労働時間の長期化など、現代日本が労働市場で抱える問題を解決するためにも、生産性向上を目的とした「スマートワーク」は重要な考え方です。近年より注目を集めるようになったひとつの理由としては、ITやICTの発展が挙げられるでしょう。たとえば従来のようにオフィスで働くだけでなく、在宅勤務を実現させるためにはチャットツールやWeb会議システムといったコミュニケーションツールが欠かせません。また在宅勤務でも、資料やデータを共有できるようなクラウドストレージサービスも必要となってきます。こうしたテクノロジーの発展で、これらのツールやサービスを低コストで利用できるようになりました。これまでは難しかったテレワークが現実のものとなったことで、スマートワークへの注目度も高まったのです。
スマートワークはあくまで生産性の向上を目的としており、短時間労働を目指す働き方とは異なるので混同しないように注意が必要です。
スマートワークが注目されている背景
近年スマートワークが注目されるようになっている背景として、「ワークスタイルの変化」「労働力不足」などがあります。 たとえば、少子高齢社会になっていることから今後労働力不足はより深刻になっていくとみられていますし、これに対応できるようなワークスタイルの確立が求められています。さらに、グローバル化が進むことで、国内向けのサービスを提供していた企業であっても海外企業と競争しなければならない状況に追い込まれつつあります。従来のやり方をしていたのでは勝ち抜くことができず、淘汰されるかもしれません。
スマートワークで実現される働き方の種類
次に、スマートワークに含まれる具体的な働き方の種類を見ていきます。ここに記載したものに限定されるわけではなく、他にもいろいろな形態が含まれますのが、今回はその一例をご紹介します。
| テレワーク
テレワークは、自社オフィスから離れた場所で仕事することをいいます。自宅に限らず、コワーキングスペースやカフェなどさまざまな場所からの勤務がこれに該当します。テレワークを使用すれば、住んでいる場所にこだわることなく優秀な人材を確保することもできます。ICT技術の発展とともに定着化したスマートワークです。
| フルフレックス
1988年の労働基準法改正で、フレックス制という働き方を導入する企業が増えました。フレックス制では、コアタイムとフレキシブルタイムを設け、一定範囲内で勤務時間に自由度をもたせます。コアタイムが必ず勤務しなければならない時間帯で、フレキシブルタイムが従業員の自由に設定できる勤務時間帯を意味します。 しかしICTを活用することで人事制度の最適化が図られ、こうしたコアタイムの設定をしない勤務形態も生まれました。それが近年注目を集めている「フルフレックス」です。総労働時間内から、始業時間や終業時間を自由に決められるので、 各自のライフスタイルに合わせられますし、結婚や出産といったライフステージの変化にも対応しやすくなります。
| ワーケーション
ワーケーションも注目を集めています。こちらはテレワークの一種と捉えることもできますが、特にバケーション要素に着目した働き方になります。休暇のような雰囲気のなか働くことを意味し、リゾート地や旅先など、場所にとらわれません。国内外を問わず、いつもと変わらず仕事に従事できたり、リアルタイムで会議に参加できたりすることはICTの発展があったからこそ実現できる働き方といえます。日本航空やJTBなどではすでに取り入れられており、ストレスから解放された環境で仕事ができると評価されています。在宅勤務が主流のテレワークに対し、こちらは リフレッシュも兼ねられるというメリットがあります。仕事と休暇を融合させた新しい働き方といえるでしょう。
| パラレルワーク
パラレルワークは、本業を複数もつことをいいます。スマートワークが実現できる環境を整えることで、時間的にも場所的にも縛られることがなくなり、複数の仕事をもつことも可能になります。従来は兼業を会社から認められていたとしても、休日の間もしくは帰宅後夜間に副業を少しおこなう程度しかできないケースがほとんどでした。しかし 生活の自由度が高まることによって、本業を複数もつことも可能になります。会社員でありながら飲食店を経営することもできますし、各仕事のボリュームによっては3種以上の業務をおこなうことも可能です。
企業がスマートワークを導入する4つのメリット
前項で挙げたのは、どちらかというと従業員側に生じるメリットです。しかし、スマートワークの実現は企業側にも大きなメリットをもたらします。生産性向上により利益を伸ばし、短期的な恩恵を受けるだけでなく、今後さらに重要度の高まる、 人材確保にも効果を発揮します。以下で詳しく見ていきましょう。
| 生産性の向上
スマートワークではICTツールを積極的に利用することも増えてくるでしょう。さまざまな業務を効率化するデジタルツールを整備することで生産性向上につながる可能性があります。 東京商工会議所が行った2020年11月の「テレワークの実施状況に関するアンケート」の調査結果によると、テレワークを実施したことによる効果として「働き方改革の前進」や「業務プロセスの見直し」「コスト削減」とともに「定型的業務の生産性が上がった」という回答が上位5項目内にランクインしています。 参照:「テレワークの実施状況に関するアンケート」調査結果
今では便利なクラウドサービスも多数展開されており、それらの活用も視野に入れれば、少ない労働力でも大きな成果が得られる可能性があります。ビジネスツールを複数導入し、組み合わせるようにして社内環境を整備するのもいいですし、効率的な管理を追求するのであれば複数機能が統合されたツールの導入もおすすめです。
「フレックスタイム制」の導入では、従来の労働時間に捉われず、メリハリをつけて効率的に働くことも可能になります。この時間を自己啓発や人材交流、家族や友人とのコミュニケーションに充て、個々の成長へと投資することで、 従業員一人一人が、そして会社全体で革新性や創造性を高まり、より高い成果へ結びつけることが期待できます。
| 優秀な人材の確保
従業員にとって働きやすい環境を整備すれば、優秀な人材も多く集まってきます。貴重な労働力を蓄え、さらなる発展につなげることができるようになります。 また、育児や介護などが原因で一般的な働き方ができなくなっている優秀な人材に対してアピールができますので、社会的にも大きな意義をもちます。
| 離職率の低下
従来の画一的な働き方ではなく、個々の従業員に寄り添った働き方を提供することで、ワークライフバランスを最適化できるようになります。従業員は余暇を自由に楽しむことができ、家族や友人との時間も確保しやすくなります。また従業員の不満やストレスを溜めないことは離職率の軽減にもつながるでしょう。早期退職や、優秀な人材の流出も防止できれば企業にとって大きなメリットとなります。
スマートワーク導入の課題
スマートワークを導入することで多くのメリットが生じることを解説してきました。従業員のためになることはもちろん、企業の利益にも影響しますし、人材確保などの観点からいえば将来的な企業活動のためにも重要であると評価できます。 しかし導入に際しては配慮すべきポイントがいくつかあります。簡単に導入できるものではないと認識すること、情報漏えいのリスクに留意すること、業務評価が適正におこなわれるよう仕組みを整えることが重要となります。それぞれ詳しく解説していきます。
| 既存の仕組みを大幅に変えるための労力が必要
すでに多様なITツールを使いこなし、テレワークなどを導入している企業であれば、これに加えて別の働き方を取り入れるのはそれほど難しいことではありません。しかし従来の働き方から変わらない環境で長年活動してきた企業の場合、制度を刷新するには相当の労力がかかります。そのためこの点を上層部も理解して、人事制度の刷新も含めて、全社的に取り組むことが不可欠です。 またフルフレックスにより個々の就業時間が不規則になれば、確認や承認のタイミングがあわなくなる可能性があります。そのため従業員同士で時間差を考慮しておくことや、状況に応じて時間を合わせるように工夫する必要もあるでしょう。 テレワークを許した場合、ペーパーレス化も重要になってきます。ペーパーレス化ができていなければスムーズに作業は進められず、かえって効率が落ちるおそれもあります。本格的にペーパーレス化に取り組まなければなりませんし、片手間に変革を進めようと考えるのではなく、専門の人材を配置するなどして、プロジェクトとしてはじめる必要もあるでしょう。
| 情報漏えいのリスク
ワーケーションをはじめ自宅や外出先からのテレワークは、企業の重要な情報が第三者に漏れてしまうリスクを高めてしまうこともあります。外出先でフリーWi-Fiを使ってインターネットにアクセスすれば、盗聴のリスクも考えられます。またパラレルワークで複数の仕事を行き来するようになれば、意図せずともちょっとした会話のなかから大切な情報を漏えいさせてしまう可能性も否定できません。そこで重要なのが従業員に対する教育と環境の整備です。 社内システムへのアクセスができるデバイスを制限したり、セキュアなツールを使用したり、また仕事の安全な進め方に関して事前に講習を開くことも場合によっては必要になるでしょう。 参考:これだけは知っておきたい!テレワークのセキュリティリスクと対応策
情報やセキュリティに関する個人個人のリテラシー教育も欠かせません。社内のセキュリティレベルや、社員の意識リテラシー向上のために、ISMS (ISO27001)を取得することも有効です。ISMSとは「情報セキュリティの目標を達成するための仕組み(マネジメントシステム)」で、国際規格に準拠し、認証機関に認められれば認証を取得することができます。 もちろん社内のシステム自体もセキュアなものでなければなりません。社内にセキュリティ対策ができるプロがいない場合は、信頼でき、サポートが充実しているツールを選ぶことがより重要なポイントとなります。
| 公平な業務評価が難しい
テレワークなどによりオフィス内で働かなくなった場合、Web会議やチャットなどを通じて以外、上司が部下の様子を見ることができなくなります。そのため従来の方式で評価をおこなうのでは対応しきれない可能性が出てきます。新たな評価方式を考え、多様な職場環境においても公平な評価ができるようにしましょう。 なおここで重要なのは成果に着目することです。互いに作業の様子は確認できなくなりますので、その過程の評価を適切におこなうのはオフィスワーク時よりも難しくなるからです。勤務時間などとは関係なく、必要な成果が出せれば本来問題はないのであり、成果をきちんと評価すれば従業員のモチベーションも下がらず、生産性向上につながります。ただし今まで以上に、成果や実績数値を明確にする必要があります。また、成果が出るまでの過程もしっかりと理解しなければなりません。そのためにもより一層、部下のアウトプット過程を意識したヒアリングなどを増やすことが重要になってきます。
スマートワーク導入時におすすめの対策
上記課題を意識することで、導入時および導入後の大きなトラブルを回避することができますが、しスマートワーク導入の効果を最大限に発揮するためには、以下のポイントに注意して新たな働き方の基盤をしっかりと整えることが大事です。
| 適切な業務管理および労働管理
注意すべきポイントのひとつは、適切な業務管理・労働管理です。公平な評価のためにも重要です。 スマートワークが導入されると各従業員の業務状況・勤怠管理が複雑化することがありますので、あらかじめ対応できるよう改善策を打っておきましょう。テレワークなど実際に顔を合わせることのない働き方では、労働時間などのルールをしっかりと定め、従業員に遵守させる取り組みも大事です。またフレックス制を導入した場合、会議など複数で集まらなければならない場合の時間調整なども必要でしょう。プロジェクトメンバー同士であらかじめ各自の生活スタイルなどをある程度共有しあい、うまく調整することも重要です。
| 作業環境の構築
会社側での管理体制が整うことは第一段階として必要なことですが、制度だけを設けて、実際の作業環境を従業員に丸投げすることのないように注意しましょう。テレワークの場合でも、たとえば従業員がプライベートで使っているデバイスを仕事に使わせるのではなく、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの支給も検討すべきです。そのほかマウスやキーボード、ポケットWi-Fiなども貸与し、どのような場所で業務をおこなっても従業員間で環境格差が生じないようにしましょう。 参考:備品の在庫管理を「個人」から「チーム」の業務に 参考:備品購入申請をデジタル化するメリットと実現イメージ
| システムの構築や整備
従業員が仕事を快適にできるよう、デバイスの貸与などをおこなうことに加え、各従業員がアクセスするシステムの準備をしましょう。当然、この基盤システムは企業側が負担し、運用することになります。 テレワークなどを導入し複数の場所から業務をおこなう場合、業務効率化を実現させるためには円滑なコミュニケーションが欠かせません。Web会議システムやチャットツールの導入は必須ともいえるでしょう。社外からも承認ができるようペーパーレス化を実現し、申請業務などをデジタル化します。そのためにはワークフローシステムの導入も検討する必要があります。 また業務に関わるさまざまな書類の管理をデジタル化するすなら、文書管理システムを利用するという手段もあります。あらゆる書類が社外からも閲覧・編集可能になるので、情報共有が効率化します。 参考記事:ペーパーレス化で働き方改革!業務効率化に与える効果 参考記事:ペーパーレス化検討を進めるには?働き方を変えるためのヒント 参考資料:企業の業務実行を加速させる文書管理とは、またその実現方法とは
まとめ
いかがでしたでしょうか?労働人口がますます減少していくこれからの時代、企業が業績の安定・向上を図るには、多様な人材が多様な働き方で活躍できる環境整備が欠かせません。スマートワークが浸透すれば、従業員一人ひとりがライフスタイルに合わせた働き方をしながら、労働生産性を高めていけます。自社に最適なスマートワークの形を検討していく際のヒントになれば幸いです。
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この記事の執筆者:冨田(プロモーショングループ)
2013年新卒入社。文系出身でプログラミング未経験者ですが、過去にさまざまな業務・業種・立場の方のお客様の電子化/デジタル化を支援させていただきました。その経験を通じてSmartDB(スマートデービー)があらゆる企業の業務の効率化に貢献できると感じています。ITスキルがない人でも「自分たちの業務も自分たちで電子化/デジタル化できる!」ということを実感してもらえるよう、いろいろ検討中です。“自分たち”で“自分たちの業務”の業務で利用するシステムを改善できる楽しみをお伝えしていきます。